| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-205 (Poster presentation)
河川には陸域生態系から様々な物質が流入するため、集水域の陸域環境の大規模な変化は、河川生物の個体群動態に強く影響しうる。しかし、陸域から河川、河川の上流から下流といった物質の移動には一般に長い時間がかかるため、河川生物の個体群動態への影響を検討するには、長期にわたるモニタリングが必要となる。京都大学芦生研究林は、京都府北部の由良川上流域に位置し、本流部の約36.5km2の集水域全体が河川改修などの人為的な環境改変が非常に少ない形で管理されている。芦生研究林では、1990年代より鹿の個体数の増加が報告され、2006年までに大規模な森林下層植生の衰退が生じた。森林下層植生の崩壊は河川への土砂流入の増加による河床環境の変化を介して、最上流部の一次谷において水生昆虫の種構成を変化させたことが報告されている。こうした上流域での環境改変は、下流域のより大きな河川生態系にも影響を与えうると予想される。演者は、芦生研究林内の集水域最下流部において、2007年よりライントランセクト法による魚類の目視観察と水深、流速、底質といった河川環境の測定を継続してきた。その結果、調査地において、河床礫の継続的なサイズ減少と、特に2010年以降の河床の砂地面積の増加が観察された。それに対応する変化として魚類では大型の礫を好む一部の種(ウグイなど)の減少や砂地を好む種(カマツカ)の増加が観察された。これらの結果をもとに本発表では河川魚類の個体群動態と集水域の森林下層植生衰退の因果関係について議論する。