| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-206  (Poster presentation)

アマミイシカワガエルにおける変態サイズと成体サイズの地域間比較

*岩井紀子, 休場聖美(農工大・自然環境保全)

カエルは水域で幼生ステージ、陸域で成体ステージを過ごし、各ステージで成長を行う。変態時の体サイズである変態サイズは幼生時の水域環境の適・不適の影響を受け、成熟時の成体サイズは変態サイズに加えて、陸域環境の適・不適の影響を受けると考えられている。成体サイズは適応度に強く影響するが、成体サイズに対する変態前後の成長の相対的な重要度は明らかになっていない。本研究では、変態サイズに相違が認められているアマミイシカワガエルについて、変態サイズと成体サイズを地域間で比較し、変態サイズの相違が成体サイズの相違に反映されているか検証した。奄美大島の4地域(湯湾、中央、小湊、山間)に存在する11ヶ所の沢において、2015年から2017年にアマミイシカワガエルの変態個体184個体を捕獲し、頭胴長、尾長、体重を測定後、頭胴長と尾長の比から尾が消失した時点の体重を推定した。また、同地域において2012年から2017年に成体112個体を捕獲し、体重の測定と性別の記録を行なった。4地域の体重の変動係数において、変態サイズと成体サイズ間の有意差は雌雄共に認められなかった。変態サイズにおいて、推定体重を地域で説明する一元分散分析を行なったところ、地域の効果が有意に認められ、事後検定の結果、中央と山間は湯湾と小湊より大きく、さらに小湊は湯湾よりも小さかった。成体サイズにおいては、地域と性別の交互作用が認められ、メスでは中央が小湊と住用より小さかったが、オスでは中央と小湊が湯湾よりも小さかった。変態サイズと成体サイズの関係は地域間で一致しなかったことから、変態サイズは成体サイズに反映されるとは言えなかった。地域間で陸域における成長速度の相違が存在し、変態サイズの相違を上回ると考えられることから、成体サイズにおける陸域の成長の重要性は水域のそれよりも相対的に高いことが示唆された。


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