| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-208 (Poster presentation)
海洋性昆虫ケシウミアメンボHalovelia septentrionalis Esakiは、台湾と日本に分布し、神奈川県三浦半島南岸が北限である。ケシウミアメンボは、内湾の沿岸岩礁付近に生息する。日本では沿岸開発や汚染のために個体数が減少しており、いくつかの地方自治体により絶滅危惧種として指定されている。自然海岸の消失や海洋汚染は、ケシウミアメンボの餌資源に質・量ともに影響を与えると推定される。そこで、本研究では、海洋表面で採餌するケシウミアメンボには、餌としてどのような選択肢があり、実際には、どのような餌を選択しているのかを知るため、2014年6月、2016年5月、2017年5月及び6月、三浦半島沿岸において、1)小型ニューストンネットを用いて表層生物を採集し、その組成を調べ、2)海洋表面で餌を保持しているケシウミアメンボを捕らえ、餌の種類を調べた。表層生物の組成は、常に浮遊性のカイアシ類が多数を占め、次いで、蔓脚下綱ノープリウス幼生、ホヤ類幼生、底生のヨコエビ類などであった。昆虫類の割合は、海産無脊椎動物に比べて少なく、沿岸の植生から海洋表面に落下したと推定されるアブラムシ類、キジラミ類、海洋表面で交尾し死亡するウミユスリカなどであった。また、沿岸植生・岩礁・水面下に生息するダニ類も採集された。一方、ケシウミアメンボの主要な餌は、ウミユスリカ雄成虫(2014年6月)、キジラミ成虫とアオバハゴロモ幼虫(2016年5月)、ヨコエビ類成体(2017年5月、6月)であった。ケシウミアメンボは、必ずしも海洋表面で多数を占める生物を餌として選択しておらず、種類やサイズ等によって異なる選好性を示すことが示唆された。また、ケシウミアメンボは、沿岸植生や潮間帯から海表面に供給される昆虫類、ダニ類、ベントスなど、多様な餌資源を利用して生き抜いていると推測された。