| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-209 (Poster presentation)
屋久島の低地(標高50~500m)の一次林2カ所および二次林2カ所で、自動撮影カメラを用いて、地上性哺乳類の密度推定を行った。ニホンジカ(ヤクシカ)とニホンザル(ヤクシマザル)は頻繁に撮影され、調査地間の個体密度の比較をすることができた。ニホンジカの密度は、一次林よりも二次林の方が2倍以上、高かった。ニホンザルでは、二次林はシカと同様に高密度だったが、一次林の一カ所では、二次林を上回る程の頻度で撮影され、これまで考えられていた以上に高密度に生息している可能性が示唆された。
一般的に一次林に比べて、二次林の方が生産性が高く、生息する哺乳類も多いと考えられている。これは、ニホンジカでは当てはまりそうだが、ニホンザルについては当てはまらないかもしれない。
また、二次林の二カ所を比較すると、1940年頃に大規模な伐採を受けた後に回復してきた“若い”二次林の方がニホンザルの密度が高く、比較的、伐採が少なかった“古い”二次林では、密度が低い、ないしは低下傾向にあることが示唆された。
調査地域は、動物の狩猟が長年行われておらず、捕食者もいないことから、生息地の環境収容力が動物の個体群密度に大きく寄与していると考えられる。過去の人為的な攪乱の程度が、現在の動物の分布にも大きく影響している可能性がある。