| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-212  (Poster presentation)

エゾアカガエル幼生は被食されやすい環境を自らつくる:捕食者の共食いによる巨大化に注目して

*高津邦夫(静岡大学), 岸田治(北大・北方圏FSC)

捕食者は成長することでより大きな餌種を食えるようになる。このような捕食者を含む系は「サイズ構造のある捕食-被食系」と呼ばれる。この系の特徴の一つは、捕食者は大きなサイズに到達するまでの間大きな餌種を食うことができないにも関わらず、その期間に大きな餌種が捕食者の生存や成長に影響を与える点である。小さな捕食者の生存や成長は大きな餌種を捕食できる大型捕食ステージへの新規加入に反映されるため、大きな餌種はその新規加入の程度を決めることで将来の捕食リスクを自ら制御する。このため、大きな餌種が新規加入にどのような影響を与え、そして、それが将来の捕食リスクにどう反映されるかを明らかにすることは、サイズ構造のある捕食-被食系の動態の理解に必用不可欠である。これまで多くの研究が一貫して、大きな餌種が新規加入を減らし結果として将来の捕食リスクを抑えることを示してきた。この新規加入への負の効果は、大きな餌種と小さな捕食者が資源を巡って競争したり、大きな餌種が小さな捕食者を食ってしまうことによって生じる。従来の研究とは対照的に、わたしたちは大きな餌種が新規加入を増やすことによって将来の捕食リスクを高めることがあることを報告する。エゾサンショウウオ幼生とその餌種であるエゾアカガエルのオタマを使った操作実験において、サンショウウオがオタマを食えないほど小さいときにオタマが存在することは、サンショウウオの活動性を高めることで共食いを促進し、そして、巨大な共食い個体の数を増やした。これらの共食い個体はオタマを食うことができるまで巨大化し、結果としてオタマは強い捕食圧に苦しんだ。この結果は、大きな餌種が将来の捕食リスクをどう制御するかに関する従来の研究と質的に異なる事例を示すことに加えて、「大きな餌種の存在が小さな捕食者個体の採餌を促進する」という大きな餌種が新規加入に影響を与える新たな経路を提案する。


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