野生動物の個体群管理を進めるには、対象動物の個体群についてモニタリングを行う必要がある。従来、ニホンザル個体群の生息状況をモニタリングする手法として直接観察法が行われてきたが、調査に多くの時間と労力が必要となる。そこで、本研究では簡便かつ低コストでニホンザルの個体数密度を推定する手法として、カメラトラップ法を検討した。近年、開発されたRowcliffe et al.（2008）による自動撮影カメラを用いた個体数密度推定では、平均群れサイズ、調査期間内の対象動物の撮影枚数（撮影率）、対象動物の移動速度のパラメーターが必要となる。平均群れサイズと調査期間内の対象動物の撮影枚数（撮影率）は、現地調査によりデータを得ることができるが、移動速度はGPSデータロガーなどの個体追跡技術が必要となるだけでなく、移動速度における調査方法は確立していない。そこで、カメラが撮影できる面積と調査期間内に撮影されるニホンザルの撮影頻度から、個体数密度を推定する単純推定法を用いて個体数密度推定を行った。
今回、カメラトラップ法を検討するにあたり、餌付けニホンザルを対象とした。京都府京都市西京区嵐山に位置する嵐山モンキーパークいわたやま付近に生息する嵐山E群のニホンザルを対象に、カメラトラップ法を用いて個体数密度を推定した。単純推定法で求めた嵐山E群のニホンザル個体数密度推定値は1.12 no. ha-1であった。