| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-222  (Poster presentation)

交尾期間のオオミズナギドリオスはメスの滞巣パターンに応じて採餌トリップ長を変化させる

*坂尾美帆(東大大海研), 後藤佑介(東大大海研), 高橋晃周(国立極地研究所), 佐藤克文(東大大海研)

繁殖地と採餌場所を行き来する海鳥にとって、交尾やつがい相手の防衛、育雛など、繁殖行動のために島に滞在する時間と、採餌のために海上に滞在する時間とはトレードオフの関係にある。交尾期間のオオミズナギドリのメスは、繁殖地から離れた生産性の高い採餌場に行くため、1回の採餌トリップが長くなり、帰巣頻度が下がることが知られている。オスは父性獲得のために巣やメスを他個体から防衛し、メスと何度も交尾するために、メスよりも頻繁に巣に戻ることが知られているが、生産性の高い遠方で採餌する場合は毎日巣に戻ることはできない。そのため、オスは繁殖のための島滞在と採餌のための海上滞在との間で適切に時間を配分し、メスと巣で出会う確率を高める必要があると考えられる。そこで、オスがどのような戦略で自身の帰巣頻度を決めているのかを調べるため、2012年と、2014年-2016年にオオミズナギドリのつがい計14ペアにジオロケータを装着し、つがいの交尾期間の帰巣頻度を解析した。その結果、オスがつがいのメスと巣で出会えた場合は、次に巣に帰ってくるまでの日数 (採餌トリップ長) が長くなり、海上で過ごす時間が長くなることがわかった。しかし、オスが巣でつがいのメスに会えなかった場合は、次の採餌トリップの7割以上が1日トリップとなり、連日巣に戻ってきていた。得られた採餌トリップ長の分布を元にシミュレーションを行った結果、メスの滞巣パターンに応じてオスが採餌トリップ長を変化させた場合は、変化させなかった場合に比べ、交尾期間中にメスと6回以上出会える確率が上がることがわかった。以上より、オスは1回の帰巣時につがいのメスと出会えたかどうかに応じて自身の採餌トリップ長を変化させ、島でつがいのメスに会う確率を高めつつ、採餌時間を確保していることが示唆された。


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