| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-237  (Poster presentation)

二酸化炭素がイモゾウムシの配偶行動に与える影響

*熊野了州, 布廣あやめ(帯広畜産大学)

イモゾウムシEuscepes postfasciatusはサツマイモの世界的な重要害虫で,日本では南西諸島に分布し,本種の分布域からの寄主植物の移動は植物防疫法により厳しく制限されている.こうした問題を解決するため,沖縄県では不妊虫放飼法による本種の根絶を目的とした取り組みが1994年より久米島で行われている.不妊虫放飼法は,不妊化雄が野生雌と交尾をすることで防除効果が生まれるため,防除を効率的に行うには,イモゾウムシの基礎生態の解明,特に配偶行動の理解が重要になるが,実験室内では,一連の配偶行動は観察されるものの交尾率は高くはない.本種はCO2濃度が大気中よりも高い土中やサツマイモ塊根内で生涯の大半を過ごすため,高CO2環境に適応し,実験室内環境が配偶行動の再現上好適ではない可能性がある.本研究では,イモゾウムシの活動性や配偶行動におけるCO2濃度の役割を明らかにするため,室内環境(約500 ppm)と高CO2濃度環境(3,000 or 10,000 ppm)で配偶行動を調査するとともに,CO2への誘引性を調査した.その結果,CO2への誘引性はないものの,室内環境に比べ,高CO2濃度環境で活動性・交尾前マウント率・交尾頻度の上昇が観察された.一方で,高CO2濃度環境で交尾時間の短縮や輸送精子数の減少が見られた.これらのことから,高CO2濃度環境は,雄の配偶行動を活性化させると同時に,雌の抵抗性を高める可能性があることが示唆された.


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