| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-238  (Poster presentation)

ヒメボタル成虫の発光活動の定量的観察

*小西哲郎(中部大学)

ヒメボタル(Luciola parvula)成虫集団の野外での発光活動について、独自に開発した手法を用いて定量的観察を行った結果を報告する。

ヒメボタルは日本の陸地に住むホタル科の昆虫である。この種は陸生で、一生を陸上で過ごす。成虫はメス=オス間で発光による交信を行って繁殖活動をする事が知られている。

ヒメボタル成虫が複数個体で発光しているとき、その発光している個体数が数分から数十分スケールで変動することは観察者の間で経験的に知られていた。発光数の変動はメス=オス間だけでなくオス=オス間に発光による相関があることを示唆しており、その実態の解明と生物学的な意味は興味深い課題である。

我々は、デジタルカメラによる静止画連写と画像処理により、発光数を定量的に測定できること、また、発行数を時系列として得ることが出来ることを示した。これは我々の知る限りヒメボタルに限らず発光生物の観察において初めてのことである。

また、この手法の応用として、ヒメボタル成虫集団の発光活動の時間的変動に着目した。発行する成虫の数が数分から数十分のスケールでかなり変動することを捉えることが出来た。昨シーズンは週や観察データを4例取得することが出来た。出現数の時系列プロファイルは日により、また場所によりかなり異なる。差異の原因は今後の課題である。さらに、今回は、ヒメボタルの発光時系列と合わせて、観測地における温度、湿度をロガーで計測して比較した。これは、ヒメボタル成虫集団の発光活動に外的要因が与える影響を知るためである。これまでのところ、温度と湿度は観測時間の間に緩やかに変動するものの、前述の短い時間スケールでの発光個体数変動とは別であるようにみえる。すなわち、発光個体数変動は外的要因によるものではなく、ヒメボタル集団内部の相関である可能性が示唆される。


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