| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-241  (Poster presentation)

逃避中の目立つ音~ショウリョウバッタのチキチキ音を探る

*久我立, 粕谷英一(九州大学)

ケガや死は個体の適応度を大きく減らすため、接近する捕食者から逃避することは被食者にとって重要である。一方で、逃避は採餌や求愛の中断やエネルギー消費といったコストを伴う。したがって、逃避行動は単に逃げるだけでなく、コストにも応じて決定されると考えられている。
 逃避行動においては、その開始だけではなく、逃避中の被食者の行動も成功確率に大きな影響を与えうる。逃避している被食者が発する信号も、その一つである。この逃避中の信号は、派手な音や目立つ色で捕食者に狙われやすくなる、というコストを含む。一方で、この信号を受信した捕食者が追跡を中断したり、同種他個体に警報したりすることで、信号を送信した被食者はベネフィットを得ていると考えられている。しかし、逃避中の信号に関する先行研究では、結果からの信号内容や受信者の判断が複数可能であるため、信号の意義については未だ明らかでない。
 明るい草地によく見られるバッタの1種、ショウリョウバッタでは、人の接近に対し、オスがチキチキと音を出しながら逃避する様子がよく観察されている。このチキチキ音に関しては定性的な観察記録がいくつかあるものの、定量的な記録は行われておらず、その適応的意義については未だ明らかでない。そこで、逃避中の信号の意義を明らかにするため、本研究ではこのショウリョウバッタのチキチキ音に着目した。
 人を捕食者のモデルとして、野外において連続3回の接近実験を行った。結果、メスが発音することはなく、オスは発音する個体と発音しない個体がいた。また、発音するオスの中にも、3回すべての接近に対して発音しながら逃避する個体と、発音するときと発音しないときがある個体がいた。FID(逃避開始時の捕食者―被食者間の距離)とDF(被食者が逃避によって移動した距離)を測定したところ、発音の有無はFIDとの顕著な関係は示さない一方、DFは発音した個体の方が大きかった。


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