| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-245  (Poster presentation)

都市域における非繁殖期のアズマヒキガエルの環境利用

*宮崎裕也, 倉本宣(明大・農)

 都市における両生類の研究は限られており、エコロジカルネットワーク機能の検証の事例は少ない。本研究では、幅広い環境に適応し都市化の進んだ地域にも生息を可能とするものの近年個体数の急激な減少が報告されるアズマヒキガエルを対象に、都市域における繁殖個体群の構造や行動圏、利用環境、分布状況を明らかにすることを目的にマイクロチップによる追跡調査を実施した。本研究では東京都目黒区内の緑地20箇所を研究対象地とした。繁殖期である2017年2月から3月に繁殖池に集まった個体に標識を行い、その後同6月から12月にかけて、標識を行った繁殖池を含む緑地とその周辺の緑地を踏査した。結果として計81個体を捕獲し、マイクロチップによる標識を行った。そのうち26個体が再捕獲されたが、いずれの個体も繁殖期に捕獲された緑地からの移動は確認されなかった。繁殖池を有する緑地から半径200m(大型のカエル類の平均的な移動分散距離)以内には複数の緑地が点在していたことから、研究対象地におけるアズマヒキガエルは同一の緑地内で生活史を完結することが推察された。このことから生息地は分断されており、各個体群は孤立状態にあることが示唆され、遺伝的多様性の低下が危惧される。一方で、目黒区が収集している区民による目撃情報により、現在は研究対象地全域に本種が分布することが確認された。これらのことから研究対象地のアズマヒキガエルの生息環境の保全において、移動経路の確保がもっとも重要であることが示唆された。


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