| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-304  (Poster presentation)

ボルネオ低地林における択伐施業がANPPとバイオマス動態に及ぼす影響

*今井伸夫(東京農大), 清野達之(筑波大), 相場慎一郎(鹿児島大), 武生雅明(東京農大), Jupiri Titin(Forestry Dep. Sabah), 北山兼弘(京都大)

 ボルネオ熱帯低地林の多くは、複数回にわたって強度の択伐を受けた二次林である。一方、伐採量や表層土壌への負荷を低減させた低インパクト伐採RILの導入が、一部の地域において進みつつある。こうした熱帯二次林は、その回復過程で温室効果ガスCO2を大量に固定するため、重要なCO2吸収源として期待されている。熱帯二次林の炭素動態予測のために、多くの熱帯林でバイオマス動態や地上部純一次生産ANPPが調べられてきた。しかしこれまで、ANPPに及ぼす従来型伐採とRILの影響を比較した研究はない。
 本研究の目的は、択伐施業がANPPとバイオマス動態に及ぼす影響を明らかにすることである。マレーシア、サバ州デラマコットの原生林と伐採後5-13年経過したRIL林と従来型伐採林において、樹木の直径成長やバイオマス動態を10年間にわたって調べた。リターフォール量を1年間にわたって調べ、ANPP(=木部バイオマス生産+リターフォール)を求めた。
 直径成長速度と木部バイオマス生産は、伐採強度が強い森林ほど速かった。これは、伐採後の光環境の好転による成長促進効果と、伐採林におけるパイオニア樹種の個体密度の増加のためだと考えられる。これとは逆に、リターフォール量は、伐採強度が強い森林ほど顕著に低下した。したがってANPPも、伐採強度が強い森林ほど低下した。このように、伐採後約20年経過しても生態系機能への影響は残る一方、RIL導入は択伐による負の影響を軽減できることが分かった。


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