| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-310 (Poster presentation)
マングローブ林は、熱帯環境での大きなNPPと嫌気的土壌での小さな従属栄養生物呼吸のために、特異的に大きなNEPを持ち、地球上で最も Carbon-rich な生態系と考えられている。しかし従来の研究では、潮位変動などの水文レジームが炭素循環に与える影響はほとんど考慮されていない。本研究は石垣島吹通川河口に分布するマングローブ林を対象として、Biometric-based NEPの推定に加え、地形測量と水文学的観測による水動態モデルの構築と、溶存無機炭素 (DIC) と溶存有機炭素 (DOC) の時空間変動のモニタリングから、水文レジームを考慮したNEPの再評価を試みた。プロットベースでは、吹通川マングローブ林の地上部バイオマスは164.6 t C ha-1、深さ1 mまでの土壌炭素量は261.5 ± 53.2 t C ha-1であり、高緯度としては大きな炭素プールを持っていた。地上部NPPは樹木成長 (SI) が1.6 ± 0.15 t C ha-1yr-1、リター生産 (L) が3.8 ± 0.28 t C ha-1yr-1であり、通常のマングローブに林に比べ SI/L が小さく、樹木成長が遅かった。干出時の平均土壌呼吸速度 (140 mgCO2 m-2 h-1) は陸上生態系に比べて低い値を示したが、温度との指数関数的な相関が認められた。また冠水後も、水面から干出時の50%程度のCO2放出が認められた。河口におけるDICとDOCの濃度は、干潮時には満潮時の海水濃度より上昇することが明らかとなった。これはマングローブ土壌起源の炭素が引潮時に水に混入して流出していることを示している。このように、水文レジームを考慮しない従来の Biometric-based NEP のマングローブ林への適用には大きな問題があり、溶存炭素流出量を考慮した新たなスキームを提案する。