| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-318  (Poster presentation)

トドマツ人工林の保残伐施業試験地(REFRESH)における伐採前後の水質変化

*長坂有(道総研林業試験場), 長坂晶子(道総研林業試験場), 速水将人(道総研林業試験場), 石川靖(道総研環境科学研究セ)

  北海道中央部の50年生前後のトドマツ人工林において,生物多様性などに配慮して,様々な伐採方法を10ha前後の小流域単位で行う,保残伐施業試験(REFRESH)が2013年に開始された。伐採前2年間水質を観測してきた4流域のうち,3流域で,2015年6~8月に伐採施業(皆伐,中量保残(広葉樹50本/ha残す),大量保残(広葉樹100本/ha残す))が行われ,その後2年間,対照流域(非伐採)とともに水質変化を観測した。
  伐採直後から冬までの各流域の平水時の硝酸態窒素(NO3-N)濃度に大きな変化は見られず,1年後から2年後にかけて皆伐流域,中量保残流域では,それぞれ伐採前の1.2倍,1.8倍に上昇したが,大量保残流域ではほとんど変化しなかった。
伐採年と1年後の2年間,積雪-融雪期(2~4月)に,皆伐,保残伐流域で,硝酸態窒素(NO3-N)濃度の顕著な上昇が見られ,冬期間(11~5月)の平均NO3-N濃度は,皆伐流域で伐採前の約1.8倍,中量保残流域で2倍となったが,大量保残流域では伐採年に1.6倍,伐採翌年に1.4倍と低下傾向にあった。
  夏期出水時のNO3-N濃度の最高値は,伐採年に皆伐流域で1.8倍(2.4mgN/L),中量保残流域で3.7倍(1.7mgN/L),大量保残流域で1.4倍(1.9mgN/L)といずれも上昇したが,皆伐,大量保残流域では伐採2年後には,伐採前よりも低くなった。
  伐採施業後,各流域とも年間水流出率が増加したため,年度毎に平水時,出水時の流量,NO3-N濃度からLQ式を作成し,年間の窒素流出負荷量を算出したところ,皆伐,中量保残流域では伐採年,伐採翌年に伐採前の2.4倍前後(年間の比負荷量7.5~9.7kgN/ha)となったが,大量保残流域では1.4倍にとどまった。これらの結果から,大量保残施業では,皆伐,中量保残に比べて流域内での窒素保持効果が高いことを示唆する。


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