| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P2-319 (Poster presentation)
ケイ酸集積植物として知られるモウソウチクは、特に葉にケイ素(Si)を集積し、落葉を通じて大量の植物ケイ酸体を表層土壌へ供給する。このため、葉リターの分解を通じた植物ケイ酸体の放出量を把握することは、タケが土壌の理化学性に与える影響を明らかにする上で重要である。一方で、リターの表面には、土壌由来のケイ素など、乾性・湿性沈着に伴う様々な元素が付着しており、特に室内培養試験などで植物体由来の元素の挙動を精確に把握するには、これらの影響の程度を明らかにする必要がある。そこで本研究では、タケの葉リターの洗浄方法を検討することで、洗浄強度の違いがタケ葉からの元素溶脱に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
供試料には、リタートラップにより採取したモウソウチクの落葉を用いた。40℃48時間以上乾燥させた葉5 gを400 mlの超純水で超音波洗浄または振とう洗浄し、0、0.5、1、2、5、10分後の溶液中の溶存元素濃度を測定した。また同様の比率で1分間のみの洗浄操作も行った。懸濁態としての元素溶出量を把握するために、洗浄後の全溶液を0.45 μmメンブレンフィルターでろ過し懸濁物を採取した。懸濁物と洗浄後の葉は、80℃48時間以上乾燥させ、湿式分解後、ICP-AESと重量法により各画分中のSiおよびその他元素含有量を測定した。
この結果、洗浄に伴う溶存態Siは経時的に増加傾向であり、振とう洗浄より超音波洗浄で高い傾向であったが、洗浄前の葉の絶乾重量に対する溶出量の割合はいずれの洗浄操作においても1%未満であり、99%以上が洗浄後の葉に含有していた。一方、K、Pは、1分間洗浄で10%程度、10分間洗浄で20%程度が溶存態として検出され、AlおよびFeは超音波洗浄10分後で30~35%が懸濁態として検出された。以上より、洗浄操作の違いが葉からのSiの溶脱に与える影響は小さかったが、対象とする元素に応じて洗浄強度を考慮する必要性があることが示唆された。