| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-039  (Poster presentation)

イワウメ科の常緑多年草オオイワカガミは、多雪な場所ほど大きな葉をつけるのか?  −個葉サイズを支配する環境要因の探索−

*谷友和(上越教育大学), 剣持協(平塚市立八幡小学校), 堀内郁(茅ヶ崎市立梅田小学校)

 イワウメ科の常緑草本植物オオイワカガミ(Schizocodon soldanelloides var. magnus)は、基本種のイワカガミより大型の葉を有し、主に東日本の日本海側に分布する。近年は、本種とイワカガミは遺伝学的に区別できないとする見解もある。
 オオイワカガミの分布域は概ね多雪地であることから、積雪が葉の大型化に影響を及ぼしていることが予想される。そこで、新潟県上越地域の23ヶ所の林床に生育するオオイワカガミを対象に、積雪深や積雪日数を含む各種の環境要因が葉のサイズに及ぼす影響を調べた。
 各生育地で互いに5 m 以上離れた20ないし30ラメットにおいて、全ての葉の縦・横長を測定し、ラメット当たりの最大個葉面積と合計葉面積のデータを得た。環境要因については、国土数値情報平年値メッシュデータを利用し、各生育地の季節ごとの平均気温と降水量、全天日射量、積雪深のデータを得た。地表温度と積雪日数については独自に計測した。また、林冠閉鎖後の林床の光環境を、各調査地で撮影した全天写真から開空度を求めることで評価した。
 次に、葉面積を目的変数、各環境要因のいずれか一つを固定効果の説明変数、ラメットの違いをランダム効果の変数(切片)とする一般化線形混合モデルにデータを当てはめ、各モデルのAIC(赤池情報量規準)を比較し、説明力の高いモデルを探索した。その結果、春と晩秋の日射量が葉面積に強い負の影響を及ぼすとともに、夏から晩秋にかけての地表温度が葉面積に強い正の影響を及ぼしていた。一方、本解析からは、積雪深や積雪日数が葉のサイズ変異に及ぼす影響はそれほど強くないと考えられた。


日本生態学会