| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-044 (Poster presentation)
オオタニワタリ類は熱帯や亜熱帯に分布する着生植物であり、落葉落枝を捕捉することによって、森林の地上部に枯死有機物を滞留させる。そのため、それらは林内の養分動態や腐食連鎖系生物の分布に対して大きな影響を及ぼす。さらに、淡水湿地林では林床の落葉落枝が増水時に系外へと移動してしまうため、オオタニワタリ類による地上部での枯死有機物の保持は、他の森林よりも重要性が高い。本研究では淡水湿地林におけるオオタニワタリ類の機能的役割を評価するために、空間分布を中心としたそれらの個体群特性を明らかにすることを目的とした。
西表島の異なる2つの水系の淡水湿地林において10 m×40 mのコドラートをひとつずつ設定した。2017年10月に、コドラート内に生息する胸高周囲長15 cm以上の全ての樹木を種同定し、空間位置図を杭からの座標軸で測定した。そしてコドラート内にある全てのヤエヤマオオタニワタリの着生位置もまた、同様の方法で位置を測り、それらの着生高、葉数、葉長、枯死有機物堆積部分面積、胞子嚢の有無、アリの営巣の有無、等を記録した。
調査の結果、淡水湿地林ではサガリバナが最優占樹種であり、それらは空間的に偏って分布していた。ヤエヤマオオタニワタリもまた空間的に偏って分布しており、ギャップ付近で多く、林冠閉鎖部分で少なかった。ヤエヤマオオタニワタリのほぼすべてが地上高1 m未満に分布しており、平均着生高(20 .0 cm、33.5 cm)は水位上昇時の上限付近と推察された。以上の結果から、ヤエヤマオオタニワタリの空間分布に影響を及ぼしている要因について検討した。