| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-046 (Poster presentation)
樹木において枝系は当年枝の繰り返しによって構成されている。多くの樹木種で当年枝において繁殖器官の生産が行われており、当年枝は繁殖と成長という二つの活動の基本単位とみなすことができる。樹木の枝系を構成する当年枝はある程度自律的に振る舞うことが知られている。一方で、樹木の樹幹から直接分枝した枝系などの高次の単位で制御が行われていることも知られている。
時に被陰や環境条件などの影響で枝系が一斉に枯れてしまうことがある。このような枯死がおきる直前に枝系では構成する当年枝に何らかの制御を行うだろうか。その結果として当年枝の繁殖はどのようなに変化するだろうか。
北海道札幌市の森林総合研究所北海道支所内に生育するエゾヤマザクラを対象に調査を行なった。2013年に対象6個体を設定し、各個体について主幹から直接分枝する枝系3本をランダムに選んだ。合計18本の枝系のうち、2014年中に1本、2015年中に4本、2016年中に4本が枯死した。これらの先端から25本を越える当年枝が含まれる分岐までを対象の枝系として、2013年〜2017年の5月にこれらから成長する当年枝の枝長と葉芽・花芽の数を数える追跡調査を行なった。当年枝を展開型・繁殖型・維持型の3タイプに分類し、これらが枝系枯死の前年にどのように変化するか調べた。
翌年枯死する枝系では、生存する枝系に比べて当年枝あたりの花芽数が少ない傾向が見られた。しかしながら当年枝のタイプごとの割合を比較したところ翌年枯死する枝系では生存する枝系に比べて展開型が減少し維持型が増加するものの、繁殖型は比較的同程度の割合を示すことが明らかになった。これらの結果をもとにエゾヤマザクラの生活史戦略について議論する。