| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-049 (Poster presentation)
樹木の開花には豊凶周期のあることが知られている.しかし,長寿命の樹木では,開花開始樹齢から加齢とともに開花の周期が変化することが予想される.雌雄異株樹木にも豊凶現象が報告されているが,加齢による周期の変化や雌雄間の同調の変化に関してはほとんど知られていない.本研究では,冷温帯の渓畔林の落葉高木であるシオジ(Fraxinus platypoda)を対象として,樹齢の異なる林分において1990年から2017年まで28年間にわたり開花量を測定した.調査地は,埼玉県秩父山地のシオジの林齢90年の二次林と林齢200年を超える天然林である.シオジの雌雄個体の開花量を,全く開花なしのランク1から大量開花のランク5の5段階に分けて双眼鏡により把握した.28年間の結果から,両林分ともにシオジの開花には明らかな豊凶周期が見られた.二次林においては28年間にわたって,豊凶周期は2-3年で,雌雄個体の開花は,明確な同調を示した.また,全ての個体の平均開花ランクは雌雄個体でそれぞれ3.02と3.11で違いはなかった.変動係数は雌雄個体でそれぞれ0.46と0.36で雌個体の方が高かった.一方,天然林においても,2-3年の豊凶周期が見られたものの,28年間にその周期には変化が見られた.2002年以降,雄個体は毎年大量開花を示した.一方,雌個体ははっきりとした周期を示していた.また,雌雄個体間の開花は,二次林ほど明確な同調を示さなかった.全ての個体の平均開花ランクは雌雄でそれぞれ3.22と4.11で,明らかに雄個体の方が高かった.変動係数は雌雄でそれぞれ0.48と0.28で雌の方が高かった.以上の結果から,若齢林の方が雌雄個体の同調性が高いこと,高齢林の方が雄個体の開花量が高いことが明らかになった.ただ,両林分ともに2002年以降の開花周期の変動には気候変動など外的な要因が影響している可能性も考えられる.