| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-052  (Poster presentation)

風媒の雌雄異株植物に開花スケジュールの性的二型性はあるのか?

*松久聖子, 丑丸敦史(神戸大・人間発達環境)

開花スケジュールとは花の咲かせ方に関係する形質であり、特に個体内の開花の同調性(同時開花数/生産つぼみ数)は、虫媒種では送粉者の誘引効果に影響する。虫媒の雌雄異株植物では、メスの方がオスよりも生産花数が少ないため、送粉者誘引効果の不利を補償するために、メスの方が、長い寿命の個花を高い開花の同調性で咲かせ、ディスプレイサイズをできるだけ大きく維持することが知られている。一日あたりに新しく咲く花の割合についてもメスの方が高いことがわかっている。一方で、送粉者の誘引効果を必要としない風媒種において、開花スケジュールにどのような性的二型が生じるのかはわかっていない。本研究では、風媒の雌雄異株植物スイバを対象に、開花スケジュールに関係する各形質の性的二型とともに繁殖成功との関係を調べた。
 風媒種でも、虫媒種と同様に、メスの方が個花の寿命が長く、開花の同調性が高いことがわかった。しかしながら、一日あたりに新しく咲く花の割合は、虫媒種と異なり、有意な性差はみられなかった。風媒種では雌雄ともに、一日あたりに新しく咲く花の割合が高いほど、異性の個体群との開花の重なりが増加した。メスについては、オス個体群との開花の重なりが多いほど、結実率が増加した。以上の結果は、風媒種では、一日あたりに新しく咲く花の割合に性的二型が生じにくいことを示唆している。その主な理由は、風媒種では虫媒種とは異なり、同時開花数による誘引効果が必要ないために、雌雄ともに異性と同じタイミングで開花することのみが重要であるためと考えられる。個体内の開花の同調性(同時開花数/生産つぼみ数)に性差が生じているのは、メスの方が個花の寿命が長いために生じている現象と考えられる。


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