| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-054 (Poster presentation)
虫媒花植物は送粉者との相互作用によって複雑な性表現を含む多様な花形質や交配様式を進化させてきた。材料としたサイヨウシャジンはキキョウ科ツリガネニンジンの変種で釣鐘形花をつけ雄性先熟性を示す。このような釣鐘形の花はハナバチ媒花の特徴とされてきた(e.g. Richards,1997)。 しかし,Funamoto & Ohashi (2017)はツリガネニンジンでは夜間にのみ蜜を分泌し鱗翅目に適応したガ媒花であることを指摘した。これとは異なりサイヨウシャジンでの予備的観察では昼行性の双翅目と夜行性の鱗翅目が訪花しており,いずれが有効な訪花昆虫であるか不明である。強い雄性先熟性花の場合有効な訪花昆虫は(1)雌雄両時期に訪花すること (2)実際に花粉を運んでいること(3)その花粉により結実するといった条件を満たす必要性がある(Kearns, C. A. & D. Inouye, 1993)。そこで本研究ではサイヨウシャジンの交配様式と有効な訪花昆虫を明らかにするため,交配実験による交配様式の解明,訪花昆虫相と有効な送粉者の特定,昼夜の昆虫相の送粉効率の比較を行った。調査は奈良県御所市と奈良県葛城市の2地点で行った。その結果以下のことが明らかとなった。 (1)交配実験からサイヨウシャジンは自家不和合性があり主として外交配を行っている事が明らかになった。 (2)2集団ともに膜翅目,双翅目,鱗翅目の訪花が観察された。双翅目は早朝〜日中に,鱗翅目は日没〜夜中に頻度高く観察されそれらの胸部・腹側・脚部に多くの花粉の付着が認められた。また雄・雌期ともに訪花が観察された。 (3)袋がけ処理の昼夜間での結実種子数には有意差は認められず,昼間と夜間両方の訪花昆虫が結実に寄与していることが示された。ただし開花および雌期への変化は午後〜夕方に起こることから昼間の訪花昆虫は結実の不確実性の保証である可能性がある。