| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-056 (Poster presentation)
大陸とかつて一度もつながったことのない海洋島では、両全性の植物が雌雄異株に進化したり、草本植物が木本に進化する例が知られている。これは島において他殖促進の性表現(雌雄性)が有利であることや、森林の空きニッチに草本が進出しやすいためであるとされ、海洋島に特徴的な植物の進化パターン(Island syndrome)と考えられている。典型的な海洋島であるハワイ諸島でも、諸島内での植物の雌雄異株化や、草本の木本化の例が多数知られている。しかし、まだ多くの固有植物では、その実態が未だ明らかでない。
本研究では、ハワイ諸島固有種で、これまで両全性と記録されていたアカネ科ハナガサノキ属のGynochthodes trimeraに注目し、その性表現を明らかにすべく、花形態や結果率を調査した。その結果、本種はこれまでの記載とは異なり、雄株と雌株が集団中に共存する雌雄異株であることが明らかになってきた。また本種は樹木性であり、調査した個体は最大で幹の直径が35 cm、高さ12 mにもなった。ハナガサノキ属は、本種を除くほぼ全ての種がつる性であり、ハワイ諸島に移入してから、樹木性を進化させた可能性が考えられた。
本研究ではさらに、G. trimeraの性表現と樹木性の起源を知るために、葉緑体DNAの配列情報を用いた系統解析を行った。その結果、本種は雌雄異株性の祖先種がハワイ諸島に移入した可能性が高いこと、一方でつる性から樹木性への進化はハワイ諸島内で起こった可能性が高いことが示唆された。
海洋島においてつる性の植物が樹木性に進化した要因としては、草本植物の木本化と同様、空きニッチへの進出が考えられる。しかしこれまでつる性の植物が島で大きな樹木に進化した報告はほとんど例がなく、島における植物の進化を考える上で興味深い。