| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-113 (Poster presentation)
湖沼や貯水池でアオコを形成するシアノバクテリアには肝臓毒や神経毒などを生産する種がいることが知られている。現在までに10種以上のシアノトキシンが知られており、毒生産能を持つ種は世界で16属以上が報告されている。これらの毒生産能の有無は株によって異なり、同一種内でも有毒株と無毒株の両方が存在する。興味深いことに、海外で有毒株が報告されている多くの種は日本にも分布しているが、そのほとんどは無毒株であり、有毒株が報告されている種はごくわずかである。近年、主要なシアノトキシンの生産遺伝子群を標的とし、環境中に存在する有毒株のシアノバクテリアを直接検出することにより、日本に分布する有毒シアノバクテリアの再評価が行われ、神経毒アナトキシン-aを生産するネンジュモ目のシアノバクテリアCuspidothrix issatschenkoiが本州を中心に広く分布していることが明らかとなった。本種の有毒株は、ニュージーランドやドイツの湖沼でわずかに報告があるものの、日本の湖沼では出現頻度が極めて高い。また、本種の有毒株のほとんどは、窒素固定能とヘテロサイトの形成能が遺伝的に欠損しており、無毒株と異なる環境に適応している。本発表では、日本における有毒シアノバクテリアの分布とともに、世界的にも研究事例が少ないC. issatschenkoiの有毒株の分子系統地理や生態的特性について紹介する。