| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-121 (Poster presentation)
本州北部におけるツキノワグマの遺伝構造を明らかにし、その構造をもたらす景観要因について検討した。捕獲個体の筋肉およびヘアートラップにより採取した体毛より148個体分のDNAを抽出し、マイクロサテライトDNA16遺伝子座の遺伝子型を決定した。ベイズクラスタリングの結果、数十kmのスケールで明瞭に遺伝集団に分かれることが明らかになった。この構造化を引き起こす要因を、地形と土地利用を重みづけとしたコスト距離を用いて検討した。各個体の捕獲地点または体毛採取地点を基に、全個体総当たりのリンク図を作成し、各リンクのユークリッド距離を算出した。これに各景観要素を重みづけしたときに、最もうまく遺伝的距離を説明できるコスト距離を検討した。地形要因については、個体間の標高差および標高CV(変動係数:coefficient of variation)が遺伝距離を生む障壁となっていることが示唆された。土地利用については、農地と市街地は遺伝距離を生む強い抵抗となっていることが示唆された。これら障壁と抵抗を組み合わせることで、ツキノワグマの遺伝構造を引き起こす景観要因を説明することができた。