| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-126 (Poster presentation)
海の景観は、古くから絵画や景勝地としても親しまれ、観光やレクリエーションで利用する観点からは経済的価値も認められている。海の景観は、その場所の地形や人工構造物によって変わりうるため、堤防建設やリゾート開発といった土地利用の変化に影響を受けやすい。しかし、人々がどのように海の景観を利用しているのかについて、定量的な評価が十分できていないため、将来、環境の変化が生じた際に、海の景観がもたらす文化的なサービスがどの程度、維持あるいは損なわれるのかは評価しにくいのが現状である。
本研究では、護岸の整備状況や海岸周辺の土地利用、地価や人口の配置といった海岸景観の特徴と、海水浴をはじめとするレジャーや景勝地としての利用との関係を検証し、どのような海の景観が、どのように利用されているのかを探った。その結果、海水浴場は、砂浜があるだけではなく、周辺に宿泊施設が多い環境に多い一方で、景勝地は必ずしも宿泊施設が多い環境にあるとは限らなかった。また、景勝地があるエリアには、水辺の開発によって生息が危ぶまれる種が生息する傾向も示された。人々が享受する海の文化的サービスは、その種類によって、利用する海の景観の様相が異なり、土地利用の改変といった環境変動に対しても、個別に応答が異なる可能性が示唆された。