| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-157 (Poster presentation)
動物の性決定様式は多様であり、XYやZWのように2つだけでなく、3つ以上の少数の性決定遺伝子が関与する場合もある。しかし、その実例はイエバエなどわずかであり、さらにそれを交配実験を通して示した研究はほとんどない。スクミリンゴガイは雌雄異体の外来淡水巻貝で、子供の性比が卵塊ごとに大きくばらつくことが知られている。この現象には3つ以上の性決定遺伝子が関与することが示唆されているが、今回、その遺伝子が少数(=オリゴジーン)なのか多数(=ポリジーン)なのかを調べるため、交配実験を行った。雄(または雌)個体に、互いに全きょうだいの関係にある雌(または雄)個体を複数交配し、親世代と子世代について性比を調べた。その結果、子世代の性比はばらつくが、ポリジーン性決定で予測されるような連続的ではなく、いくつかの値付近に収束することが示された。さらに、全きょうだいに由来する子の性比がすべてほぼ1:1で、ばらつきが小さい交配系もみられた。この結果は、その交配系ではXYのように1遺伝子座2対立遺伝子以外が偶然ホモ接合で固定されたと解釈でき、確率的にポリジーン性決定では起こりにくいと考えられる。したがって、これらの結果は、スクミリンゴガイの性決定に関与している遺伝子の数が少ないことを示している。このようなオリゴジーンによる性決定は、ばらついた性比を示す生物において、従来知られているよりも一般的なのかもしれない。