| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-165  (Poster presentation)

体サイズ進化の遺伝基盤 | モデル生物C. elegansと近縁種C. inopinataの比較

*稲田垂穂, 津山研二, 牧野能士, 杉本亜砂子, 河田雅圭(東北大生命)

一般に、動物の体サイズは、寿命や代謝率などとの相関が知られており、生態学的に重要な形質である。また、体サイズは捕食圧や気温などの様々な外的要因の影響を受けて進化し、同一の分類群内で大きくばらつく例も存在し、非常に多様性に富んでいる量的な形質である。一方で、どのような遺伝的な変異によって、その種間差が生じているかはあまり明らかになっておらず、進化機構の遺伝基盤の解明が課題となっている。分子遺伝学におけるモデル生物のCaenorhabditis elegans (C. elegans) は、2000年以降、野外個体を用いた生態学的な研究も増えており、遺伝学的知見を前提とした進化生態学への応用が期待されている。近年、日本の南西諸島にて発見されたC. inopinataは、C. elegansと非常に近縁であり、同属の他種より成虫の体サイズが大きいことが知られている。そこで、本研究ではC. inopinataにおける体サイズの進化がどのような遺伝的な変異に起因するのかを解明することを目的とした。先行研究により、C. elegansC. inopinataの体サイズの違いが幼虫期の最終発生ステージであるL4期から成虫期にかけての成長率の違いに起因する可能性が示された。この結果をもとに、両種でL4幼虫期と成虫期でRNA-seqをおこない、遺伝子発現パターンの違いを比較した。さらに、どのような特徴をもつ遺伝子が異なる発現パターンを示したかを遺伝子間クラスタリングによって解析した。発表では以上の結果を報告し、C. inopinataの体サイズの進化をもたらした遺伝基盤について考察する。さらに、今後、C. inopinataのゲノム情報から選択圧の検出をおこなう予定である。


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