| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-166  (Poster presentation)

韓国産キゴキブリCryptocercus kyebangensisの共生原生生物組成

*北出理(茨城大学), Park, Yung Chul(Kangwon University), 徳田岳(琉球大学)

 キゴキブリ属Cryptocercusは亜社会性の食材性ゴキブリのグループで、9種が知られるが、系統学的にはシロアリ類の姉妹群である。シロアリと同様に朽ち木の中に雌雄がペアで巣を創設し、親は幼虫が成虫になるまで世話を行う。また、キゴキブリ属は後腸内にシロアリと同じくオキシモナス類・パラバサリア類の共生原生生物を複数種保有するが、その種組成は宿主種に特異的である。両者の共生関係はシロアリとの共通祖先に起源すると考えられている。
 キゴキブリ属にはこれまで北米東部のC. punctulatusと北米西部のC. clevelandi、ロシア東部のC. relictus から共生原生生物が記載されている。本研究では、韓国産のC. kyebangensisの原生生物の種組成を明らかにすることを目指し、染色標本作製による調査を行った。キゴキブリは2017年にOdaesan国立公園で採集した。カバーガラスへ腸内容物を塗布し、Schaudinn液で固定した後、活性化蛋白銀鍍銀染色およびHeidenheinの鉄ヘマトキシリン染色により染色標本を作製した。前者の場合は標本塗布面をアルブミン・ゼラチン接着剤で被覆してから漂白し、続いて1%活性化蛋白銀水溶液に浸銀した後、還元処理を行った。
 標本の検鏡の結果、本種の後腸にはBarbulanympha属、Trichonympha属、Eucomonympha属、Leptospironympha属、Saccinobaculus属、Notila属、Oxymonas属の原生生物が共生していることが明らかになった。原生生物の属組成から判断すれば、本種の原生生物組成は北米の2種とは比較的大きく異なり、ロシア東部のC. relictusに近い。現在種レベルの検討を継続しており、その結果と、他の宿主種との組成の類似性について議論する。


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