| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-279  (Poster presentation)

「田んぼの生きもの全種リスト・補完計画」に向けた取り組み~滋賀県の魚類を事例に~

*金尾滋史(滋賀県立琵琶湖博物館), 阿部司((株)ラーゴ)

水田地帯における生物多様性に関する情報は近年めまぐるしく進展しており、それらを研究者のみならず、農家や一般の人たちにも使いやすい形で公開していくことは、今後の水田生態系保全をすすめていく上で重要である。その手段のひとつとして、琵琶湖博物館では、現在共同研究『「田んぼの生きもの全種リスト」の増補更新と公開システムの構築』を進めている。これらは2010年に出版された「改訂版 田んぼの生きもの全種リスト」を最新の知見に基づいて増補改訂し、データベースとウェブ上で水田地帯に出現する生物の公開を目指すものである。しかし、ひとえに水田地帯といっても各都道府県や地形、水環境などの違いにより様々な区分があり、地域ごとでの活用についてはさらに詳細なリストの作成も望まれる。そこで、滋賀県内の水田地帯で確認された魚類を基にしたリストの作成フローと、それらの出現傾向について検討した。
リストの作成については現在、滋賀県で確認されている魚類84種・亜種(国内・国外外来魚含む)を対象とし、「改訂版 田んぼの生きもの全種リスト」において掲載されている3タイプの水環境(水田・水路・ため池)に出現した魚種を、これまでの文献、博物館等の標本、演者らの現地調査結果より抽出した。それらの結果、20科63種・亜種がリストアップされ、それぞれの水環境の出現頻度を考慮すると、ほぼすべての種は水路に出現することから生活史上での重要度が高い傾向が示された。一方で、水田内での利用に関しては産卵場所や仔稚魚の生育場所として積極的に利用を行う種と、偶発的・迷入として水田に侵入してきた種に分類された。さらに出現地別に魚類相を見ると、琵琶湖湖岸域から扇状地にかけての平野部水田地帯と中山間地における水田地帯において、各種の出現の度合いが異なっており、滋賀県の水田地帯の魚類相は大きく分けて2タイプに大別された。


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