| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P3-281 (Poster presentation)
博物館などにおけるほ乳類の展示には本剥製が用いられることが多く、実物の姿をじっくりと観察するツールとして活用できる。そのように人が生物の体の特徴を観察する際、着目する部位に傾向があるかどうかを明らかにするため、タヌキの本剥製を用いてスケッチ学習による参加者の着目点について調査を行った。調査期間は2017年10月21日(土)から29日(日)までの9日間で、展示室にタヌキの本剥製を展示し、観覧者が「かんさつシート」に自由にスケッチができるようにした。シートは、耳と尾だけが消えた全身のタヌキの絵(レベル①)、顔のシルエット(レベル②)、枠線のみの白紙(レベル③)を用意し、レベル①は体の中の耳と尾を描く最も簡単なシート、レベル②は顔を描くシート、レベル③は白紙にタヌキの全体の形を自由に描く最も難しいシートとして、難易度を変えた。9日間で集まったシートのうちデータとして使用できた枚数は、レベル①のシートが63枚中62枚、レベル②が82枚中77枚、レベル③が41枚中36枚で、のべ175枚のデータを対象とした。
レベル①のシートでは、狙い通りに耳と尾が9割のシートで描かれていた。レベル②の顔シルエットのシートでは、目、鼻が多く描かれていた。レベル③の白紙のシートでは、顔のうち耳、目、鼻が多く描かれていた。さらにレベル①とは違い、尾が描かれる割合は低く、反対に足に加えて指まで細かく描かれる割合が高くなった。また、レベル②とは違い、ひげの描写がほとんどなかった。さらに目と耳の模様がどのシートでも多く描かれていた。今回の結果から、耳、目、鼻、目と耳の模様は多くのシートで描かれており着目されやすいことが分かった。一方シートによって着目点の傾向の違いがあった。その要因としては年齢による違いや、シートに元から描かれている要素による影響などの可能性が考えられる。