| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
シンポジウム S10-2 (Presentation in Symposium)
生態学研究においては古典的な統計的検定とp値が重要な道具として用いられてきたが、アメリカ統計学会が「p値が有意水準を満たすか否かだけであらゆる問題を決着させるのは、もうやめるべきである」という趣旨の声明を出し、話題を呼んでいる(Wasserstein 2016)。
しかしp値の是非をめぐる議論は未だ混沌としており、未だ決着していない。その理由の一つは、これまでの統計教育において数値計算が先行し「検定の目的とは何か」「p値とは何か」といった議論が不十分だったことにあるのではないか。例えば頻度主義の検定にはFisherの有意性検定とNeyman-Pearsonの仮説検定という大きく目的の異なる二つの枠組みが存在するにもかかわらず、これらの違いが大きく取り上げられることは少なかった。
そこで本発表は、「統計学の哲学」の観点からp値を再考し、
1)様々な統計の手法が「何のための道具か」を確認することの重要性を確認する
2) しばしば混同されるFisherの有意性検定とNeyman-Pearsonの仮説検定が、異なる目的のための道具であることを確認する
3)以上を踏まえ、古典的な検定やp値が今後の生態学で有用な道具となりうるかを再考する
以上三点を狙いとする。