| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
シンポジウム S10-3 (Presentation in Symposium)
統計的方法によるデータ解析の際には、さまざまな誤用が見られる。その方法の目的とはちがった目的に使っているというタイプの誤用もあれば、その方法が使える条件の範囲から外れた状況で使っているというタイプもあり、すでに古くなって劣った方法となっているものをそれにもかかわらずなお使っているというタイプもある。誤用の中には、結論には影響しないものもあるが、現実とは異なる結論をもたらしうるものも多い。いったん発表された内容は使用データ解析の方法まで振り返って再検討されることは少なく、また論文を含め発表された情報からは、使われた方法の妥当性がわからなかったり、そもそもどんな方法が使われたのかもわからないことも珍しくない。たとえ、結論に影響する可能性があるような誤用であっても後から発見することは難しく、現実に反する結論がひとり歩きする危険性は高い。そのため、統計的方法の誤用は、研究と科学の発展にとって重要な障害の1つである。
本講演では、結論に影響を与える可能性のある誤用に力点を置きつつ、誤用の例を概観して分類するとともに、誤用が単なる知識の不足から生じているのか、広く採用される誤用の特徴は何かなどを、検討する。誤りが生じやすいと長く言われている統計的検定の結果の解釈(帰無仮説が棄却されないことの意味やいわゆるP値の解釈)や、誤用により差のないところでも有意な差を高率で検出してしまう例(偏った“チャンピオン・データ”の作り方)などを取り上げる予定である。