| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨
ESJ65 Abstract


企画集会 T02-1  (Presentation in Organized Session)

趣旨説明:近年の環境DNA分析の進展と応用可能性

*山中裕樹(龍谷大・理工)

環境DNA分析による大型水棲生物の検出技術は、国内でその開発が始まってから10年近くが経とうとしている。調査地から汲んできた水試料中のDNAを回収・分析するこの技術はこの期間に長足の進歩を遂げて、検出可能な種も増え、生物の量を推定することも可能になってきた。ただし、「生物情報の記憶媒体としての水」からは更に多くの情報が取り出せるはずである。例えば、野外での繁殖活動のシグナルを捉えたり、過去の個体数の変動を復元したりなど、生物の生態学的な側面についての情報である。こうした情報を取得できるようにするべく、ごく最近、いくつもの革新的な研究がすすめられ、これらが可能になりつつある。また、環境DNA分析を保全活動の実務に応用しようとする動きや、これに関わって、より迅速で簡便な検出系を開発して現場で分析結果を得られるようにしようとする動きも活発化してきている。本講演では、環境DNA分析で得られる情報を拡張しようとする基礎研究や、更に実務的な方向へ技術を成熟させようとする応用研究を含めてここ数年における研究の進展状況を概観する。また、今後の環境DNA分析によって新たに展開されていくであろう各種の生態学的な研究への展望を述べて、その将来像を共有したい。


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