| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
企画集会 T05-3 (Presentation in Organized Session)
国外外来種と在来種の交雑は外見の変化と言った目に付きやすさから、これまで多くの種において報告されてきた。これに対し、国内外来種と在来種の交雑は特殊なケースを除き、一般的に形態的識別が難しいため、認知度が低いのが現状である。しかしながら、近年の分子生物学的解析手法の進歩により、国内外来種と在来種の交雑は我々の想像を越える規模で存在することが明らかになってきただけでなく、同種の場合でも外来と在来の個体が交雑することにより在来集団の適応度が低下すると言った異系交配弱勢の存在も指摘されている。このことから、国内外来種と在来種の交雑は国内外来種問題において無視できない問題であるだけでなく、種間のレベルだけでなく種内のレベルにおいても議論されるべき問題である。淡水魚は国内外来種の数において抜きんでているのが特徴であるが、その理由はアユ・サケの放流に代表される水産有用種を対象とした移植放流が古くから行われてきたことによる。また、その際同所的に生息する他魚種が付随して非意図的に移植されてきたことが今日の国内外来種蔓延の原因になったとされている。更に近年ではペットブームのあおりを受け、観賞魚の投棄・移植が国内外来種の更なる増加に拍車をかけている。我々のこれまでの調査により、現在、こうした移植による国内外来種と在来種の交雑は全国的規模で生じているだけでなく、種によってはこうした交雑による遺伝子浸透により在来個体群の遺伝的特徴の変化まで生じていることも判っている。また、こうした交雑は希少種の存在を脅かす要因の一つである一方、絶滅に瀕した個体群の保護対策のオプションの一つとして外来個体の導入が検討されているのも事実である。本集会では、こうした問題の現状を紹介すると共に、これから成すべきことについて考えてみたい。