| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第65回全国大会 (2018年3月、札幌) 講演要旨 ESJ65 Abstract |
企画集会 T16-5 (Presentation in Organized Session)
南硫黄島は、同じ小笠原諸島に含まれる小笠原群島や北硫黄島、硫黄島が人の定住等に伴う人為的撹乱を受けているのに比べると、撹乱が非常に少ない原生的環境である。今回実施された学術調査に合わせて、同島でははじめての本格的な土壌動物群集の調査を実施した。主に大型土壌動物相を把握するための定性的な調査として、標高30mから900mの10地点で、シフターでリターをふるったうえ、持ち帰った土壌を、船舶内及び父島の実験室内で大型のツルグレン装置を使用し土壌動物の抽出を行った。また、大型土壌動物群集の特性を把握するための定量的な調査法として、一地点で15分間のハンドソーティング法による調査を3回繰り返す方法を、標高10mから900mまでの6地点で実施した。
種組成に関しての詳細な分類学的な検討はこれからであるが、これまでに同島から記録のなかった分類群として、カニムシ目の一種、モリワラジムシ属Burmoniscusの一種、甲虫目ハネカクシ科の数種、ヤコブソンムシ科及びヒメマキムシ科の一種等が挙げられる。特に山頂のコブガシ林から見出されたハネカクシ科コケムシ亜科の一種は、地中生活への適応と見られる複眼及び後翅の消失が認められ、海洋島における土壌動物の進化の例として注目すべき発見である。前回の調査では真の陸性種と考えられるワラジムシ目ミズムシ亜目が発見されたが、その再確認はできなかった。
群集としてはクモ類の個体数、種数が比較的多く、ムカデ類の個体数は多いものの種数は限られていた。ヤスデ類も個体数は比較的多いが、確認されたのは一種のみであった。小笠原群島において個体数の多いワラジムシ目については、本島では海岸部の限られた場所にのみ出現した。概して分類群に偏りがあり、種数は多くないものの、特徴的な土壌動物群集が形成されていることが明らかとなった。
※本発表は、佐々木哲朗(小笠原自然文化研)と和田慎一郎(首都大・理工)との連名です。