| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) A03-05  (Oral presentation)

放精放卵型のオニヒトデの個体間に受精相性は存在するのか?
Does broadcast spawner coral-eating starfish have intra-species gametic compatibility?

*東村幸浩(宮崎大学), 志村晶史(宮崎大学), 袰岩美月(宮崎大学), 菊地泰生(宮崎大学), 湯淺英知(東京工業大学), 野口七海(宮崎大学), 谷中絢貴(宮崎大学), 長井敏(水産総合研究センタ-), 安田仁奈(宮崎大学)
*Yukihiro HIGASHIMURA(Miyazaki Univ.), Akifumi Shimura(Miyazaki Univ.), Mitsuki Horoiwa(Miyazaki Univ.), Taisei Kikuchi(Miyazaki Univ.), Hideaki Yuasa(Tokyo Tech Univ.), Nanami Noguchi(Miyazaki Univ.), Hiroki Taninaka(Miyazaki Univ.), Satoshi Nagai(FRA), Nina Yasuda(Miyazaki Univ.)

 サンゴの捕食者であるオニヒトデは、近年、度重なる大量発生を起こし、サンゴ礁生態系に重大なダメージを与えている。そのため、オニヒトデ大量発生のメカニズム解明は急務である。オニヒトデは、大量の卵と精子を海水中に放出するため、理論上、高い受精率とその後の幼生生存率が大量発生の根本的な要因となりうる。しかし、これまでオニヒトデの受精特性に関する知見は少なく、同種個体間での受精率とその後の発生を詳細に観察した例は少ない。そこで本研究では、オニヒトデの受精率及び、正常発生率に個体間での違いはあるのか、また、それらが精子濃度により変化するのか、さらにはその違いを生む要因を調べることを目的とした。
 成熟したオニヒトデは、沖縄県で雄8個体、雌13個体を採集し実験に用いた。解剖により、生殖腺を取り出した後、受精実験を行った。受精実験では、精子濃度を106, 104, 103, 102 sperm/mlの4段階を用意し、約100個の卵に対し各希釈段階の精子と受精させた。その後、実体顕微鏡観察により、受精卵、未受精卵、未成熟卵をそれぞれ区別し、受精率を算出した。また、受精卵のうち、正常幼生になったものの割合を正常発生率として算出した。
 その結果、高濃度精子下(106)において、受精率が高いが、正常発生率が激減する組み合せ(Aパターン)が見られた一方、高濃度精子条件下においては受精率が高いが、低濃度精子条件では受精率が低くなる組み合わせ(Bパターン)が見られた。また組み合わせる個体により、このパターンは変化したため、受精率及び正常発生率が個体間で異なることから、個体間の相性が存在することが示唆された。
 相性の存在が確認された後、受精関連遺伝子(Bindin, Guanylate, REJ, EBR1, ARIS)に着目し、PCRによる増幅長の違いや多型性の調査に加え、qPCRにおける発現量の違いを調査している。受精実験の結果と、遺伝子解析の結果を照合することで、相性の根本的な要因となる一端の解明を進めているところである。


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