| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) A03-07 (Oral presentation)
過去に屋久島永田浜で実施したアカウミガメの産卵個体調査から、標準直甲長に有意な違いはないものの、産卵期後期ほど卵が有意に重くなり、一腹卵数が減少する傾向が確認された。本種が環境の季節変化に応じて適応的に卵サイズを変化させている可能性が考えられた。しかし異なる年の卵重・卵数を比較したものなので、この傾向が真に季節的なものなのか、もしくは年変異なのかは不明であった。そこで同一産卵期内の調査を2年間行い、本種の卵重の季節的増加、及び卵重と卵数の間にトレードオフが存在するのかを検証した。次に5年間のデータを基に、卵重と卵数が有意に年変異しているのか検証した。
2017年5〜7月の各月に15日ずつ、また2018年の5月と7月に21日ずつ、屋久島永田のいなか浜において、本種の産卵個体調査を実施した。前後肢に標識を装着して個体識別し、ノギスで標準直甲長を測定した。巣に産出された一腹卵数を調べ、無作為に5卵の重さを量った。解析には5卵の平均値を用いた。また2014〜2016年のデータを上記2年のデータに加えて、卵重と卵数の年変異を検証した。
2017年には80個体を識別し、甲長を測定した。76個体が産んだ88巣を調べた。2018年には71個体を識別し、甲長を測定した。71個体が産んだ77巣を調べた。個体群及び個体レベル共に、両年とも月の間で、甲長を調整した卵重及び一腹卵数に有意な違いは見られなかった。回帰個体の方が新規加入個体よりも有意に重い卵を産んでいたが、卵数に違いは見られなかった。これらの結果は、過去の調査でみられた卵重の有意な「季節的」増加は年変異に起因しており、卵重と卵数の間にトレードオフは存在しないことを示唆した。実際、2014~2018年の間に、卵重に有意な違いが見られたが、卵数に違いは見られなかった。また各年の回帰個体の割合と平均卵重の間に正の相関がなかったことから、有意な卵重の年変異は標本採取個体の繁殖履歴に起因したものではなかった。