| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) B02-01 (Oral presentation)
植物とそれを利用する植食者は互いに防御機構と適応機構を進化させてきた。シロチョウ科の蝶類(以下シロチョウ)は化学防御であるグルコシノレート(GLS)を含んだアブラナ目草本を食草として利用する。シロチョウは、食草に含まれる有毒なGLS分解産物を幼虫の腸内で発現するnitrile specifier protein (NSP)によって無毒化することがわかっている。しかしながら、GLSは現在140種類以上が知られる多様な化学物質であり、食草によってその組成は大きくことなることが知られている。シロチョウはアブラナ目草本内の複数の食草を利用することが知られているため、シロチョウがNSPのみで食草に含まれる多様なGLSに適応しているとは考えにくかった。本研究では、NSPの姉妹遺伝子で、機能の不明なmajor allergen (MA)とsingle domain major allergen (SDMA)を含めたNSP関連遺伝子ファミリーについて、異なったGLS組成の食草を食べた幼虫の腸内における発現変動を調べた。その結果、SDMAの発現量は食草の種類にかかわらず一定だったのに対し、NSPとMAは食草の種類に応じて大きく発現変動を見せ、さらにそれぞれ別々の食草に強く応答した。これはNSPとMAはことなったGLSに応答し、NSPとMAという二つの解毒遺伝子を持つことによって、シロチョウが食草内のより幅広いGLS組成に対応していることを示唆している。