| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) B02-02  (Oral presentation)

植物個体間の相互作用を考慮した虫害の全ゲノム関連解析
Incorporating neighbor identity into a genome-wide association mapping of insect herbivory

*佐藤安弘(JSTさきがけ, 龍谷大学), 清水(稲継)理恵(チューリッヒ大学), 山崎美紗子(チューリッヒ大学), 清水健太郎(チューリッヒ大学), 永野惇(龍谷大学)
*Yasuhiro SATO(JST PRESTO, Ryukoku Univ.), Rie Shimizu-Inatsugi(Univ. of Zurich), Misako Yamazaki(Univ. of Zurich), Kentaro K Shimizu(Univ. of Zurich), Atsushi J Nagano(Ryukoku Univ.)

植物の個体に対する食害は、自身の形質だけでなく周囲の他個体にも依存することがある。このような植物個体間の見かけの相互作用は、植食者の移動や植物間の化学的なシグナル伝達によって生じるとされているものの、それらを担う機能遺伝子や形質を仮説フリーに検証する方法は未だない。演者らは、シロイヌナズナArabidopsis thaliana野生系統とその植食者を対象に、近接個体との遺伝子型間相互作用を組み込んだ全ゲノム関連解析(Genome-wide association study: GWAS)を提案した。2017年と2018年の2回、チューリッヒと滋賀県の2地点にシロイヌナズナ200系統8反復を移植し、発生した植食者と食害率を調査した。その結果、チューリッヒではノミハムシ2種、日本ではコナガとモンシロチョウを含め、通算で10種以上の植食者が観察された。食害率、植食者の数および群集の多様度について、自身の遺伝子型と近接効果の分散成分を推定したところ、近接効果の寄与率が10-30%見られた。線形混合モデルによるGWASの結果、チューリッヒにおけるノミハムシの食痕数と滋賀県におけるシャノン多様度に対して、有意な近接効果のピークを検出した。これらの候補遺伝子群の中には、機能未知の遺伝子の他、化学防御やその誘導応答に関連する既知の遺伝子も見られた。さらに本発表では、混植による虫害抑制に向けて、スパース回帰による表現型予測についても発表したい。


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