| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) B03-06 (Oral presentation)
2017年5月,兵庫県で,中国コンテナ貨物から特定外来生物ヒアリの国内初侵入が確認されて以降,14都道府県36件のヒアリ侵入がコンテナから発見されている.これを受けて,日本は中国側にコンテナのヒアリ汚染対策を求めてきたが、未だ,具体的な動きは見らない.ヒアリの日本定着を未然に防ぐためには,国内監視体制を強化するとともに,コンテナへのヒアリ侵入を防止する忌避剤などの開発を,日本側で早急に進める必要がある.さらに,コンテナ清浄管理に使用されてきた薬剤の残留物が健康被害や環境汚染を引き起こしていることも有り,コンテナのヒアリ汚染防止には,より安全な手立てが求められている.わさびの辛味成分であるアリルイソチオシアネート(AITC)は,天然の強力な防虫や防カビ,殺菌剤であるが,その高い揮発性と刺激性のために,コンテナ清浄管理などには使用されてこなかった.最近,細孔構造をもつ樹脂にAITCをマイクロカプセル化する技術が確立され,その徐放性コントロールが可能になった.さらに,この技術によって,AITCを含有する樹脂シートや袋等の梱包資材の製造も可能になった.本研究では,このマイクロカプセル化AITCを,コンテナ貨物のヒアリ汚染防止の忌避剤として活用できないかを検証するために,台湾のヒアリ汚染地域でベイトトラップを使って実験を行った.その結果,AITCを含有しないシートを設置したトラップでは平均157匹のヒアリがベイトに誘引されたのに対し、AITCシートを設置したトラップではベイトに誘引されたヒアリは0匹で、完全にヒアリを忌避することが確かめられた.AITCシートは,防カビ剤としてではあるが,既に,中国輸入貨物に使用された実績もある.本講演では,マイクロカプセル化AITCのヒアリ忌避効果について報告するとともに,コンテナ貨物のヒアリ汚染防止の手立てとしての有用性についても考察する.