| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) C03-01 (Oral presentation)
中国産アズキゾウムシ(dxC系統)はマメ⽬マメ科を広く食害するだけでなく、被子植物門の目レベル大系統樹(APG III)上で、ヤマモガシ⽬ハス科ハス、フトモモ⽬ヒシ科ヒシ、キク⽬キク科ヒマワリなど広範な目の乾燥種子を手あたり次第に⾷べて多数⽻化するスーパー広⾷性を⽰す。この現象には共進化の軍拡競争仮説ではなく前適応の先回り進化仮説が有力だろう。⼀⽅、⽇本産アズキゾウムシ(jC系統)はマメ科マメ亜科ササゲ(Vigna)属に限っており、別属の⼤⾖などでは⽻化成虫になるのは1% 以下である。両系統を交配させても子孫がふつうに多く羽化する同一種なのに、この広食性の大きな差異は何に由来するのか︖
そこで今回は、dxC系統とjC系統で交雑した場合、広範な乾燥種⼦での発育能⼒はどのように変わるかを報告する。この時、スーパー広食性は核遺伝⼦の発現性質なのか、あるいは⺟親から継承される細胞質因⼦(母性効果、卵を介したmRNA or 細胞内共⽣の可能性)なのかを判別することが重要なので、dxC系統とjC系統の正逆交雑実験を実施した。dxC系統が雌の場合をD-ライン, jC系統が雌の場合をJ-ラインと呼ぶ。2つの結果が予測される。
◆予測1︓F1世代で、正逆両⽅の交雑ラインともにdxCの能⼒が出れば完全優⽣で、両⽅ともに半分程度の能⼒になったら不完全優⽣となる。この場合は、スーパー広⾷性は核遺伝⼦由来だと結論できる。
◆予測2︓F1世代で、dxC系統をメスにしたD-ラインにのみdxCのスーパー広⾷性の能⼒が強く現れれば、細胞質因⼦(共⽣細菌の効果)の可能性が⾼い。卵を介したmRNA効果は羽化成虫の食性まで支配しないだろう。
現時点のマメ科8属の乾燥種子に対する産卵選好性は、D-ライン、J-ラインともに同一パターンだった。マメ科以外の目の乾燥種子を併せて、羽化までの成育日数、羽化率など全貌を報告する。