| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) C03-02  (Oral presentation)

種認識よりも棲み分けで生じる隔離強化のほうが共存を容易にする 【B】
Species coexist more easily if reinforcement is based on habitat preferences than on species recognition 【B】

*京極大助(東北大学), Hanna Kokko(Univ. Zurich)
*Daisuke Kyogoku(Tohoku Univ.), Hanna Kokko(Univ. Zurich)

種分化から間もない近縁種が二次的接触を起こし交雑などが起きる際には、交雑を避けるような適応(隔離強化)が生じるかもしれない。隔離強化モデルではよく種認識機構の進化が仮定されるが、棲み分けによる隔離強化が生じる可能性もある。しかし隔離強化がどういった形質で生じやすいかについてはあまり研究が進んでいない。特に、繁殖形質だけではなく資源利用形質も良く似た近縁種のあいだでは生殖隔離だけではなく資源競争も共存に影響することが、隔離強化の進化に影響するかもしれない。そこで本研究では個体ベースのシミュレーションモデルにより、資源利用能力が等しい2種が交雑することで生じる種認識と棲み分けの進化の比較を行った。まず、いずれかの隔離機構しか進化できない種認識モデルと棲み分けモデルの比較を行った。種認識モデルでは絶滅が生じやすく隔離強化はほとんど生じなかったが、棲み分けモデルでは広いパラメタ領域で棲み分けが進化した。どちらの隔離機構も進化できるモデルでは、種認識と棲み分けが非対称な進化的相互作用を示した。特に、棲み分けの成立は種認識の進化を促進する一方で、種認識の成立は絶滅を促進した。形質間の相互作用は進化動態と個体群動態の相互作用によって駆動された。本研究の結果は隔離強化だけではなく、多種共存や実現ニッチの進化にも重要な示唆を与える。


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