| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) F01-02 (Oral presentation)
日本各地の人工林で、シカによる苗木の食害が更新施業の主な障害になっている。シカ食害を防ぐために、植栽地を柵で囲う防鹿柵が一般に普及している。しかし、設置した柵をシカが跳び越えてしまうなどの課題があり、必ずしも有効とは言えない。そこで、防鹿柵とは別に、個々の苗木を囲って保護する用具が用いられている。この方式の代表的なものは、白色半透明のプラスティックの筒で苗木の地上部を囲ってしまうことで食害を防ぐ。しかし、筒の内部の環境は外気と異なると考えられ、苗木の成長への影響も心配される。北関東の標高約1000 mの植栽地において、このような筒で保護した苗木が突然枯れてしまうという事例が発生した。そこで、本研究では苗木の生育環境に対する保護用具の影響を明確にするともに、枯死の原因を明らかにすることを目的とした。
調査は群馬県甘楽郡下仁田町の稲含山国有林で行った。材料は2016年春に植栽したスギ2年生の苗木であった。苗木の生残と成長を定期的に測定し、保護用具内外の微気象を観測した。苗木の枯死は2018年春に顕著に表れた。そこで、2018年冬期(1~3月)の微気象を詳しく調べた。また、2018年5月に採取した枝葉の試料から、炭素安定同位体比および糖の蓄積を調べた。さらに、cryo-SEMを用いて、木口面に表れた仮道管内腔の水分を観察した。発表では、スギ苗木の生残と成長の状況を報告し、枯死の原因を考察する予定である。