| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) F01-07 (Oral presentation)
樹木のパイプモデル理論では比パイプ長と材密度のそれぞれが単木サイズに関係なく一定である場合、単木葉量と生枝下高幹断面積が比例する( Shinozaki et al. 1964; 穂積1981)。しかしながら、Ogawa (Trees 29: 695-704, 2015)は比パイプ長と生枝下高幹断面積との間には相対成長関係が成立し、相対成長指数は1より高い値を示す傾向にあり、単木葉量と生枝下高幹断面積は比例しない場合があると報告している。
ここで、Ogawa(2015)の解析では材密度を一定とみなしたが、本解析では比パイプ長の場合と同様に材密度のサイズ依存性を考慮した。ここでいう材密度は生枝下高での材密度に相当することが関係式から分かった。ただし、本解析では層別刈り取りにおける生枝下高を含む層の幹の材密度を、便宜上、代用した。その結果、材密度と生枝下高幹断面積との間には負の相関関係がみうけられ、両者の間には相対成長関係が成立した。
材密度と比パイプ長のサイズ依存性より、比パイプ長と材密度はトレードオフの関係式が誘導された。その関係式に基づくと、比パイプ長は林木個体間の被圧する側の競争の程度を表す示数とみなされ(Ogawa 2015)、一方、材密度は被圧される側の競争の程度を表す示数と考えられた。また、単木葉量と生枝下高幹断面積が比例する場合は、比パイプ長と材密度が反比例関係にあることが分かった。
実際にOgawa (2015)に基づいたデータからこのトレードオフの関係を見てみると、ヒノキ、スギ、カラマツといった人工林の樹木ではトレードオフ関係が見られる傾向にあったが、シラビソといった天然林の樹木ではこのようなトレードオフの関係は見られなかった。