| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) F01-10  (Oral presentation)

ワスレグサ属の昼咲き種と夜咲き種における時計遺伝子の発現と開花制御
Expression profiles of clock genes in the pre-flowering process of diurnal and nocturnal daylilies (Hemerocalis spp.)

*三木望(九州大学), 新田梢(東京大学), 重信秀治(基礎生物学研究所), 矢原徹一(九州大学)
*Nozomu MIKI(Kyushu Univ.), Kozue Nitta(Tokyo Univ.), Shuji Shigenobu(National Inst. Basic Biology), Tetsukazu Yahara(Kyushu Univ.)

ワスレグサ属(Hemerocallis)のハマカンゾウH. fulvaは朝開花し夕方閉花する昼咲き種で、赤い花弁を持ち、昼行性のアゲハチョウ類を主な送粉者とする。一方、キスゲH. citrinaは夕方開花し翌朝閉花する夜咲き種で、黄色い花弁を持ち、薄暮性のスズメガ類を主な送粉者とする。2種の交配実験の結果から、開花時刻と閉花時刻はそれぞれ1個の主要遺伝子によって制御され、開花時刻は概日時計によって制御されていることが示唆されている。本研究では、2種の開花時刻制御の遺伝的背景を調べるために、中心振動体を含む概日時計遺伝子の発現パターンを比較した。まず、シロイヌナズナArabidopsis thalianaとイネOryza sativaのLHY、TOC1をクエリとしてハマカンゾウ・キスゲの花弁で発現している遺伝子群のライブラリに対してBLAST検索を行い、LHY、TOC1に類似性の高い遺伝子を探した。そして、得られた遺伝子と既知の時計遺伝子の系統関係から、時計遺伝子と相同な遺伝子を推測した。その結果、LHY遺伝子と相同な複数の遺伝子が特定された。さらに、開花48時間前から開花直前まで6時間おきに採取したつぼみのtotal RNA抽出試料を用いてRNA-seqを行い、重複遺伝子それぞれの発現量の変化を調べた。どちらの種でも重複遺伝子の一方はシロイヌナズナ、イネのLHYと同様に午前6時にピークとなる周期的な発現を示したが、他方は開花直前に発現量の大幅な増減が見られた。この結果は、重複したLHY遺伝子の一方は中心振動体として機能し、他方は新たな機能を獲得して開花制御に関与している可能性を示唆している。


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