| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) F03-03  (Oral presentation)

生態系管理において時空間スケールのギャップはどのように解消できるか?
How can gaps in the spatio-temporal scale be resolved in ecosystem management?

*谷内茂雄(京大生態研)
*Shigeo YACHI(CER, Kyoto Univ.)

生態系を管理する空間スケールが大きくなるほど、その中に含まれるステークホルダーとコミュニティ(地域社会)の関心(あるいは課題)の多様性は増してくる。この空間スケールに起因する流域管理課題と地域課題のミスマッチは、流域など大スケールの生態系管理に共通する問題である。中山間地等の比較的同質なステークホルダーから構成されるコミュニティにおいては、地域の生物多様性(地域の身近な生きもの・自然)を媒介とした地域再生と連動した生態系の再生メカニズムが考えられる(ESJ65での発表)。ところが、淀川下流域など都市的な流域においては、個人生活を基盤とした異質なステークホルダーが流域内に散在するため、中山間地のようなコミュニティを前提とした再生メカニズムは期待できない。
 生態系の再生が特定の生態系サービスを提供する場合には、その生態系サービスに関心を持つステークホルダーには再生活動に参加する動機が生まれる。この参加プロセスは生態系の状態をその生態系サービスを向上させる方向へとはたらきうるが、特定の生態系サービスに関心を寄せる集団は極めて小さいかもしれない。しかし、生態系の提供する生態系サービスが多様であれば、個々の生態系サービスに関心を持つステークホルダーの集団は小さくても、サービス全体としては多くのステークホルダーが再生に関わることが可能となる。また、ステークホルダーの関心の多様性が大きいほどバランスのとれた多様な生態系サービスを生みだしうる生態系の再生が期待できる。本講演では、流域生態系が提供する多様な生態系サービスと都市的な流域に散在するステークホルダーの多様な生態系サービスへの好み・関心のマッチングをもとに、流域スケールにおける生態系再生が可能となる条件を数理モデルによって検討する。


日本生態学会