| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) F03-05 (Oral presentation)
国内の里山では、1960年代以降に生じた資源利用や社会構造の変化により、景観配置の変化が生じている。本研究では3つの集落の周囲の景観配置変化を空中写真判読とGISによるオーバーレイ解析により明らかにし、景観配置変化の共通点と相違点を明らかにした。調査は、養蚕地域であった埼玉県比企郡滑川町山田集落(336 ha)、平野部稲作地域の滋賀県近江八幡市八幡山(646 ha)と、中山間部稲作地域の広島県庄原市東城町宇山中集落(464 ha)を対象とした。それぞれ、1947年から2009年にかけて4ないし3時期(おおむね20年間隔)の空中写真の判読によりベクタ型相観植生図を作成し、GISによりオーバーレイ解析を行った。
養蚕地域であった山田集落では、桑畑→アカマツ低木林→同高木林→落葉広葉高木林と最大面積の植生・土地利用が変化した。平野部稲作地域で市街地とも接する八幡山では、水田や建物地の面積が多かったが、樹林地・草地ではアカマツ高木林→同低木林→同高木林→落葉広葉高木林と最大面積の植生が変化した。中山間稲作地域の宇山中集落では、1964から88年にかけて、アカマツ高木林→スギ・ヒノキ高木林へと最大面積の植生が変化した。米軍空中写真により戦後から1960年代の景観配置の変化を明らかにできた山田集落と八幡山では、この期間にアカマツ林と草地の相互間での変化が大きかったことが読み取れた。これは、燃料革命以前の景観変化の動態を示すものであると考えられる。その後、1960年代から1980年代にかけては、山田集落での桑畑の耕作放棄と、八幡山、宇山中集落でのスギ・ヒノキの植林が景観変化の中心であり、それまでの慣行とは異なる林野の利用が景観変化をもたらしたと考えられる。1980年代以降は、マツ枯れによるアカマツ林の広葉樹林への変化が大きく、森林の伐採による植生の退行が見られないことから、林野の放棄が顕著になったとみられる。
(本研究はJSPS科研費 JP15K16286の助成を受けたものの一部である。)