| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) F03-06 (Oral presentation)
日本の高山帯において、高山植生は積雪分布に応じて群落が明瞭に変化することが知られている。また、積雪量や消雪時期は、年による変動が大きいばかりでなく、気候変動による影響を受けて、積雪量の減少や消雪時期の早期化が生じることも予想される。積雪量や消雪時期の変化は、高山生態系におけるフェノロジー構造を変化させ、高山植物の成長や繁殖に大きな影響を及ぼす可能性がある。積雪深や積雪分布の評価は、高山植物の成長・繁殖や高山植生の分布を論じる上で極めて重要であるが、世界的にも多雪な環境におかれている日本の高山帯においては、積雪深分布を現地で直接計測すること自体が難しく、面的に広い範囲に及ぶ調査もこれまで困難なことが多かった。近年、小型無人航空機の技術革命やSfM等の画像解析技術の開発により、精度の高い三次元写真測量が容易に実施できるようになり、この技術の生態学分野への応用が期待されている。本研究では、汎用性の高い市販のドローンを用いた写真測量により、積雪深分布の3Dモデルを作成し、高山帯における積雪深の空間分布やその季節動態を明らかにした。調査地は富山県内に位置する立山連峰室堂山の北西斜面である。この斜面上に約8haの調査区を設定し、ドローンによる空撮を4月中下旬から9月末まで合計15回実施した。空撮ごとに地上標準点(GCP)を約50箇所設定し、全てのGCPについてGNSS測器を用いて測位した。これらの画像とGCPよりDEMを作成し、ある時点(t)でのDEM(t)と無雪状態である9月末でのDEMとの引き算により積雪深分布を推定した。測深棒により求めた実測値とドローンによる推定値を比較したところ、一部を除いてズレは僅であり精度が高いことが分かった。また、植生調査により区分された6つの群落について、それぞれの群落毎に積雪深を求めたところ、群落毎に特定の積雪深を有することが明らかとなった。