| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
一般講演(口頭発表) F03-09 (Oral presentation)
滋賀県大津市に位置する比良山系東麓部では、琵琶湖との間に比高1,000m以上の急斜面が連続し、扇状地が直接湖に面している。琵琶湖の沿岸には浜堤があり、その内側に内湖も発達する。平坦地はほとんどなく、河川は琵琶湖に直接流れ込み、その多くは河床が上昇して天井川となっている。比良山麓には、農業、漁業、林業、石工などを生業としてきた旧和邇・木戸・小松村の集落があり、北国街道を通じて多くの人々が行き来した。比良山系からは、花崗岩やチャートなどの石材が産出され、堤、シシ垣、棚田の石積み、水路などに利用されてきた。また、土石流や洪水などの自然災害に対処するための様々な工夫を行ってきた歴史がある。例えば、大物集落では、洪水ごとに何度も決壊した四ツ子川の谷間を抜けた所に、直進する流れを南に流すための「百閒堤」(堤の上巾15m、長さ200m)と呼ばれる石積の堤を、1852年から6年近い歳月を費やして築いた。比良山麓の集落には、こうした江戸時代から明治時代にかけての山林や河川の共同管理、境界争いに関する裁許絵図、地租改正に伴って作られた地籍図などの古地図が多数存在する。本研究では、比良山麓の守山、北比良、南小松集落の古地図から道や水路、集落の位置、水系管理に関する構造物、土地被覆などから水系管理の特徴を読み取り、自然災害に対応するための伝統知を明らかにした。