| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


一般講演(口頭発表) I03-03  (Oral presentation)

原子力災害に伴う営農中断後の水田における水生昆虫相
The fauna of aquatic insects in paddy fields after interruption of cultivation caused by radiological hazard

*三田村敏正(福島農業総合センター), 遠藤わか菜(福島農業総合センター), 吉岡明良(国環研福島支部), 田渕研(農研機構東北農研), 松木伸浩(福島農業総合センター)
*Toshimasa MITAMURA(Fukushima Agr Tec Ctr), Wakana Endo(Fukushima Agr Tec Ctr), Akira Yoshioka(Fukushima branch, NIES), Ken Tabuchi(Tohoku Agr Res Ctr, NARO), Nobuhiro Matsuki(Fukushima Agr Tec Ctr)

東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故では福島県内の12市町村に避難指示が出され、多くの住民が避難を余儀なくされた。これらの地域では営農が中断され、その後表土剥ぎ及び客土といった大規模な除染作業が行われた。このような農業生産環境の変化は、過去に例のない人為的な生態系攪乱と考えられる。これらの地域では、現在、徐々に営農再開が進められている。水稲作付け再開後の水田生物の遷移実態を明らかにし、避難指示を受けず営農を中断していない地域と比較することは、生物多様性回復のために必要な要因解明に対して極めて有用と考えられる。そこで、営農再開後の水田生物について、農業に有用な生物多様性の指標生物調査・評価マニュアル(2012)で示された指標生物の中から、アカネ類羽化殻、イトトンボ類成虫、水生昆虫類(水生カメムシ目及び水生コウチュウ目)、ダルマガエル類及びアシナガグモ類についてマニュアルに基づいて調査を行っている。ここでは、その中から、水生昆虫類について2018年の調査結果について報告する。調査は、平野部と山間部に分け、その中で営農中断の有無、表土剥ぎ及び客土の有無、栽培方法の違い(移植、直播)を選定し、16地区42枚の水田で行った。その結果、20種の水生昆虫(カメムシ目8種、コウチュウ目12種)が確認され、営農を中断したほ場の方が営農を中断していないほ場よりも多い傾向が見られた。ヒメアメンボ、キイロヒラタガムシ、コミズムシ属は営農中断の有無にかかわらず多くのほ場で、コシマゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウ、ケシゲンゴロウ、ミズカマキリ、チビミズムシ属は営農を中断したほ場でのみ確認された。今後も調査を継続するとともに、種組成の違い等を詳しく解析する予定である。


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